長州征伐を薩摩に任そうとしているが金も人力も浪費するから薩摩は拒んでいるが幕府の命だと拒み続けるのも出来ん。
かと言って我々に勝てば今度は自分達が目の上の瘤。長州と同じ道を辿るのを恐れている。
坂本君の話だとそう言う事だ。」
八一八の政変,禁門の変と相次いで会津と手を組んだ薩摩にやられて来たのに今度はそんな相手と手を組めと言われた所で素直に飲み込める訳がない。
だけども道が残されてないぐらいに長州は窮地に立たされているんだ。
「手を組んだその先は……。」
入江は鉄砲玉を食らった腹を手で押さえながら真剣に桂を見つめた。
「倒幕。
坂本君が狙っているのはそこだ。全てを壊して一から作り直す。https://www.easycorp.com.hk/en/accounting
それで……今度西郷が下関まで来る事になってる……。面と向かって話さねばならんのが今から苦痛だ……。」
そんな忙しい最中に桂は馬でわざわざ萩まで自分を追ってきてくれたのかと思うと三津は胸が苦しくて息が詰まりそうだった。
自分だって桂が大変な時に傍で何もしてやれてない。
三津は立ち上がるとお椀に味噌汁を注いで桂に差し出した。
「今日は私が作りました。」
それを聞いた桂はすぐにそれを受け取って口に運んだ。最初はゆっくり味わって後は一気に掻き込んだ。
「美味い……。私が飲みたかった味噌汁だ……。」
さっきの苦悶の表情が和らいだのを見て三津も少し目元を綻ばせた。
「私に出来るのはこれぐらいなので。」
三津はすぐ桂の側から離れた。桂が寂しそうに三津の背中を目で追うから高杉はどうしたもんかと息をついた。
「三津さん,桂さんを癒せるのは三津さんだけぞ。このままやと桂さんの心も砕けるぞ。」
「晋作よせ。私は構わない。先に三津の思いを踏み躙ったのは私だ。これも罰だ,しかと受け止める。」
三津がそれを聞いて広間を出てしまったのを桂が慌てて追いかけた。周りはハラハラしながらもそれを見ているしかなかった。
「ホンマに……どないしたらええんやろ……。」
幾松も廊下の方に目をやって溜息をついた。
「高杉さん,こっち戻ってからまた何かあったそ?」
文は余計な事言ったのはお前だぞと高杉に詰め寄って胸ぐらを掴んだ。「なっ何かあったとかやなくて三津さんの本音を聞いたそ。
三津さんは自分の心を割れ物に例えた。真っ二つに割れて金継で直るんならええが粉々になったもんは直せんと。」
「それで桂様の心も砕けるぞか……。
この馬鹿っ!そんなんの言うたら三津さんが自分責めてしまうの分からんそ?
今追い詰めてどうするん!まだ気持ちの整理をしとる途中やろ!」
文が高杉を前後に激しく揺さぶった。馬鹿,阿呆,間抜け,能無しとあらゆる罵声を浴びせた。
「やけど自分ばっか被害者でもないやろ!三津さんももうちょっと桂さんの気持ち汲むべき違うんか?」
「やけぇ作り直すんやろ!はい,さよならって捨てたん違うやろ!桂様の気持ちも汲んだからこそ二人の最善を探そうとしとるんやないん!?
自分の幸せだけ願っちょったらとっくに捨てとるやろあんな軟弱骨なし野郎!」
「文ちゃん抑えて!一旦抑えて!」
これはいかんと入江が間に入って文を止めた。
「晋作,文ちゃんの言う通りや。三津は今まで自分を優先して来た事なんかない。腹立つくらい頭ん中桂さんの事だけやった。やけぇ今回初めてや,自分からあの人の側を離れたのは。
三津にも三津のやり方があるそ。さっきのは冷たく見えたかも知らんが今の三津にとって必要な距離があれなそっちゃ。それをとやかく言ったらあの子は身動き取れんくなる。」
「……悪い。あまりにも桂さんが不憫に見えたけ。」